米中央軍(CENTCOM)クーパー司令官が、「限定的な空爆による効果は限界に達した」として作戦の一時停止をホワイトハウスや国防総省に進言(アクシオス(Axios)2026/7/26)。

理由としては、①約2週間の集中空爆(「エピック・フューリー」作戦等)で、イラン側の船舶攻撃能力が大幅に弱まり、事前に設定していた打撃目標の大部分(約80%)を達成・消耗させたと評価、②残り約20%の目標を排除するには、より大規模な軍事作戦(本格的な戦闘行動)へ踏み切る必要、③中東に駐留する米軍や同盟国の防空迎撃ミサイルの在庫が減少することへのリスク、が指摘されている。

同司令官の進言を受け、軍事力だけに頼る作戦の限界が認識されたことで、トランプ大統領がイラン側への空襲を一時中断し、外交的交渉の余地を残す判断を下す大きな要因になったとアクシオスは報じている。

空爆は「敵の能力を一時的に削ぎ、時間の猶予を作る(あるいは交渉のテーブルにつかせる)」手段としては強力だが、「政治的目的を完全に達成する(相手を完全に屈服させる)」単独手段としては限界があるというのが、基本的な考え方。司令官が「限界」に触れたのも、固定標的を叩き終えた段階でこれ以上空爆を続けてもコストに見合う成果が得られないという、軍事合理的な判断に基づいたものと考えられる。

そもそも、空爆には即効性や自軍の損害を抑える強みがある一方、決定的な限界がある。

①空爆の「強み」

・限定的・戦術的な目的に対して高い効果を発揮。

・自軍の損害(地上兵力の犠牲)を抑える。

地上部隊を投入せずに遠距離から敵の能力を削ぐことができるため、政治的コストが低く抑えられる。

・特定インフラや軍事拠点のピンポイント破壊

精密誘導兵器により、防空レーダー、指揮統制センター、弾薬庫、軍需工場などを正確に無力化できる。

・敵の移動や作戦行動の抑止・延期

上空からの監視と攻撃の圧力により、敵の機動や兵站(補給)網を麻痺させることができる。

②空爆の「限界」(なぜ効果が頭打ちになるのか:航空戦力特有の弱点)

・標的の枯渇(Target Exhaustion)

固定の主要拠点や大型兵器を破壊し尽くすと、空から視認・攻撃できる有効な標的がなくなる。

・敵の適応と分散

敵は空爆を受けると、拠点を地下深くに移設したり、小型兵器(ドローンや携帯型ミサイル)に分散・偽装させたりして空爆を回避する。

・領土の「占領・支配」は不可能

航空機は物体を破壊できるが、その土地を維持・物理的に管理(占領)することはできない。制圧には地上部隊が必要。

・「屈服」効果の限定性

歴史的にも、空爆で住民や政権の戦意をくじいて降伏させる「士気爆撃(Morale Bombing)」の効果は非常に低いことが分かっている。

④軍事史における評価(過去の大規模な空爆作戦でも空爆の限界が浮き彫り)

・ベトナム戦争(北爆作戦)

圧倒的な爆撃を行ったが、ジャングルを利用した補給網(ホーチミン・ルート)を完全に遮断することはできず、北ベトナムの戦意を挫けず。

・湾岸戦争(1991年)

空爆によってイラク軍の防空網や通信網をほぼ完璧に破壊したが、最終的にクウェートを解放しイラク軍を撤退させたのは、その後の大規模な地上戦だった。

・コソボ紛争(1999年)

NATOによる78日間の空爆のみでユーゴスラビア軍を撤退させた稀有な例。これも外交的孤立やロシアの圧力、地上侵攻の示唆などが重なった結果であり、空爆単独の勝利ではないと分析されている。

“Top U.S. military commander in Middle East advised halting Hormuz bombing,”(AXIOS Barak Ravid, Jul 26, 2026)