2026年7月6日、中国は南シナ海の原潜からJL-2またはJL-3のSLBMを発射し、約7,300km飛翔し南太平洋の「非核地帯」に着弾。航行警報からは、同日に2回の試験(渤海→日本上空→南太平洋、南シナ海→フィリピン上空→南太平洋)を検討していた可能性があるが、実施されたのは後者のみ。
中国が国際海域へSLBMを発射したのは史上初で、インド太平洋での海洋核戦略能力を初めて明示的に示した形だが、中国は「年度計画に基づく訓練で、関係国に事前通告をし、国際法と国際慣例に合致」と主張している。
このタイミングでの発射試験の理由:
①豪州・太平洋島嶼国への牽制:豪州とフィジーの防衛協定締結と同日で、中国は豪州の地域安全保障強化を「中国封じ込め」と見なし、牽制の意思表示をした可能性。
②米国・同盟国の軍事演習への対抗:日米豪の陸軍演習「Southern Jackaroo」終了直後で、ハワイ海域では同時期に米主導の大規模海軍演習RIMPACが進行中。中国はフィリピン上空を飛翔させた可能性があり、RIMPAC参加国への不満を示した可能性。
③中露の戦略的協調の演出:中露合同演習「Joint Sea 2026」の開始にあわせた可能性。ただし、渤海から発射しなかった点はロシアとの直接協調を避けた可能性を示唆。
④技術的理由:2025年に公開された新型SLBM JL-3だとすれば、その性能検証の可能性。中国は長距離・実戦的な飛翔データを取得し、海洋核戦力の信頼性向上を狙った。
中国は、「国際慣例に合致」としているが、HCOC(ハーグ行動規範)に定める「事前通知協定」を満たしていない。中国はHCOC非加盟国であるが、今回の通知は数時間前〜23時間前のバラバラな二国間連絡のみで、通知範囲、内容データ、透明性のいずれも低く、2024年の試験でも米・日・豪・NZ・仏が強く批判した。
中国の核弾頭数は6年間で200発から600発以上へ急増しており、透明性欠如は国際社会にとってリスクとなっている。ICBMサイロ建設・ミサイル増産が進むが、公式説明はほぼ行われておらず、不透明な核態勢のもとでの国際海域でのSLBM試験は誤認・誤算の危険をはらんでいる。
また、このような中国の行動は他国(北朝鮮・イランなど)にも悪影響を与え、「大国がやらないなら自分たちも通知不要」という口実を与えかねない。
米・英・仏はP5枠組みで中国に透明性向上を求め続け、HCOC加盟を長年要求している。今回も中国は「通知した」と外交的に誇示するが、「国際標準」には程遠い状態だ。
おそらく中国は、国際海域でのSLBM試験を常態化させようとしているが、不十分な事前通知は地域の危機管理を不安定化させる。中国は、まずはHCOCに加盟し、標準化された発射通知を行うべきである。

