海氷減少と地政学的混乱(スエズ・紅海問題)が重なり、アジア〜欧州間の高速ルートとして北極航路が注目されている。しかしAllianzは、北極は依然として商業航行における最もリスクの高い環境と警告。

Allianz社のSafety and Shipping Review 2026によると、北極圏の経済規模(GRP: Gross Region Product)は 、投資・資源開発・海運活動が拡大し、2003〜2022年で約3倍(6660億ドル)に急速に増大した。

北極海航路(NSR: Northern Sea Route)はロシア北岸沿いを通るルートで、アジア〜欧州の航海日数(スエズ経由:40日、喜望峰経由:55日)を20日強に大幅に短縮できるため、今後利用増の可能性がある。

この航路では、2009年にドイツのBeluga Shippingが初の商業航行を行い、2018年にはMaerskが初のコンテナ船航行(Venta Maersk)を行った。2025年には初の中国〜欧州コンテナ船が22日間で航行し、貨物量は 320万トンで過去最高、コンテナ航行数は23航海に増加した。

しかし、NSRは依然、「主流ルート」としては高リスクだとAllianzは強調している。その理由として、極寒・氷・嵐などの厳しい自然条件、遠隔地で救難能力が乏しいこと、事故時の環境被害が甚大、サルベージが困難ことを挙げている。

最大の障害は、ロシアの原子力砕氷船運営会社Rosatomflotが制裁対象となっていることだ。これにより、救援・砕氷支援が複雑化し、保険・運航リスクが増大したため、西側船社はNSRからほぼ撤退し、現在の通航の約95%がロシア・中国船となっている。

北極圏の資源・航路を巡る大国間競争は激化しており、北極は新たな戦略的フラッシュポイントになり得る。この競争に参入したのが韓国であり、NSRを新たな経済成長エンジンと位置づけ、釜山港を北極航路の主要ハブに育成する国家戦略を推進中で、2026年夏に初のNSRコンテナ航行を計画している。

Allianzは、北極航路の経済的メリットは大きいが、その将来は「経済性 × 制裁 × リスク × 地政学」で決まるとし、広範な商業利用には依然として大きな障害が残るため、当面はロシア・中国中心の限定的ルートに留まると結論づけている。

“Allianz Sees Arctic Shipping Boom Potential, But Warns Risks, Sanctions and Geopolitics Could Hamper Growth,”(Malte Humpert June 25, 2026 gCaptain)