10月12日、「ワルシャワ安全保障フォーラム2026」でNATO欧州連合軍最高司令官のアレクサス・グリンケヴィッチ大将(米国)が、ロシアがNATO加盟国を攻撃した場合の3段階からなる新たな作戦構想を発表。NATO加盟国が攻撃された場合は「今夜にでも戦う準備ができている」と述べ、ウクライナ侵攻を続けるロシアをけん制した。
・第1段階:阻止(Blunt / Blunt the initial attack):ロシア軍などによる最初の侵入・攻撃を前線部隊で食い止め、進撃を阻止。
・第2段階:鈍化(Block / Block the continuation of the attack):空軍、海軍、宇宙、サイバー部隊が連携して制空権・制海権を確保。低コストのドローンとAIをベースにした標的指定技術、多領域(マルチドメイン)部隊を活用し、敵の攻撃の勢いを弱めて占領を阻止。
・第3段階:破壊(Degrade / Degrade the enemy):前進してくる敵の戦闘部隊だけでなく、それを支える指揮・統制(コントロール)体制、補給線、作戦遂行体制の全体を徹底的に無力化・破壊し、相手の戦闘継続能力を完全に破壊。
注目されるのは、同司令官が、この計画について「米国が他地域で交戦中の場合も考慮している」と明言したことだ。米国のインド太平洋重視へのシフト、トランプ政権下で欧州の防衛負担増加が求められていること、欧州諸国が「米国依存からの脱却」を模索していることなどを背景に、米軍の主力が別の戦域に投入され、大規模支援がなくても戦う意志と能力を示そうとしている点だ。
また、NATO軍事委員会のジュゼッペ・カヴォ・ドラゴーネ委員長らは、この戦略における「勝利」とは「戦争を絶対に始めさせないこと」であると次のように強調している。
・エスカレーションの責任を相手に負わせる:
本戦略の目的は、敵の戦略的敗北ではなく「攻撃の制止」。防衛に徹することでNATO側が戦況を無駄にエスカレートさせる理由をなくし、さらなる攻撃が自らの首を絞めるだけ(デエスカレーションしか選択肢がない状況)だと攻撃側に認識させる。
・2029年のマイルストーン:
西側諸国が将来の安全保障上の課題に対応するための準備を完了させる重要な節目(完了目標)として、2029年が位置づけられている。グリンケヴィッチ司令官は「ロシアとの衝突が差し迫っているわけではない」としつつも、「平和を維持する最も効果的な方法は、戦争に備えることだ」と述べており、強固な集団抑止システムの実証を目指している。
ロシアは9月、NATOがロシアの飛び地カリーニングラード州の孤立を図れば、核兵器を使用する用意があると警告する書簡をNATOに送るなど、けん制を強めている。これに対し同司令官は、核による威嚇がNATOを分裂させることはなく、必要ならNATOもエスカレーションに対応できると強調。
NATOは11月13日、核抑止を目的とした定例の軍事演習「ステッドファストヌーン」を開始し、ウクライナ侵略を続けるロシアを念頭に強固な防衛力を示す狙いだ。
“NATO’s top general lays out plan to fight Russia — with or without America,”(October 12, 2026 6:11 pm CET
By Victor Jack POLITICO)