米海軍は中東で高い戦闘能力を示しているが、対中国の「長期・大規模・遠距離」戦争では「持続性(endurance)」が決定的課題となる。戦術的な強さがあっても、補給・修理・弾薬・人員・産業基盤を長期間維持できなければ、太平洋での大規模戦争には耐えられない。
中東での成功は対中「本番」の指標ではない。米海軍は紅海・ホルムズ海峡で高度な統合防空、精密打撃、継続的プレゼンスを成功させているが、これらは短期間・近距離・後方支援が健在という有利な条件下での成果。中国との太平洋戦争は距離・規模・継続性が桁違いで、まったく別の能力が問われる。
中国海軍は世界最大の艦隊規模に成長し、ミサイル・防空・サイバー・宇宙領域も急速に高度化し、特に台湾周辺は中国の地理的優位(近距離・陸上補給・産業の近接)がある。対して米軍は数千マイル離れた本土からアジアの前進基地を活用しつつ戦力を投射し続ける必要があり、構造的に不利。
決定要因は「持続性」だが、これは単に損耗に耐えることではなく、損耗しながらも戦闘力を再生し続ける能力である。必要となるのは、前方での修理・整備能力、途切れない補給網、高速な損耗補填(艦艇・航空機・弾薬・人員)、長期戦に耐える産業基盤だ。
米海軍では、既に「警告サイン」が見えている。①空母打撃群の過負荷(連続的な展開で整備・人員・補給の余裕が圧縮)、②精密誘導兵器の消耗速度(SMシリーズ、トマホークなどの高価・高性能弾薬が短期間で大量消費、太平洋での戦争では消費量が指数的に増加する可能性)、③基本戦闘能力の劣化(対潜戦、機雷戦など、中国戦で必須の能力が十分に鍛えられていない)などだ。
太平洋で勝つための鍵は、分散前方基地。現状は日本・グアムに依存しすぎており、集中リスク・ミサイル脆弱性が高い。このためインド太平洋全域に分散した前方拠点を構築し、補給・修理・再生能力を前線で維持する必要で、同盟国の支援(補給・産業協力・情報統合)が不可欠。
艦隊構造にも問題がある。太平洋での戦争では補給艦・弾薬艦・修理艦・病院船などの後方艦隊が最重要となるが、現在の米海軍はいずれも数が少なく老朽化し、民間船員依存(MSC)による脆弱性が課題だ。加えて、新型フリゲートは産業維持を優先した設計で、高強度戦の護衛任務に十分ではない可能性もある。
現在のOFRP(最適化艦隊運用計画)は、平時の展開管理には有効だが、「戦時の再生速度」を測る仕組みではない。本当に問われるのは、前線で修理できるか、産業が弾薬・艦艇を戦時速度で再生できるか、補給網が攻撃下で生き残れるか、ということであり、現状の答えは「No」に近い。
米国の防衛産業は効率化(少量・長納期)に最適化されており、戦時の急速増産に対応できない。太平洋での戦争では、弾薬・艦艇・部品の消耗が同時多発的に発生し、産業基盤が勝敗を左右する。太平洋での中国との戦争は、補給・基地・艦隊構造・産業基盤・同盟国支援が一体となった「総合的な持久戦」であり、米海軍はその基盤を強化しなければ長期戦に耐えられない。
“U.S. Navy Outperforms in Mideast, But a Pacific War Would Test Endurance,”(Published Jul 15, 2026 12:46 PM by CIMSEC, The Maritime Executive)