カナダ政府は、北極海上安全保障強化のため、今後7年間で8.16億カナダドルを投資して、レーダー、ドローン、監視ハブなど多層的な監視網を構築し、カナダ沿岸警備隊(CCG)の北極域監視能力を強化する。
イニシアチブには4つの主要プロジェクトが含まれる。
①イカルイト(ヌナブト準州)に通年型の海洋状況把握ハブを設置し、北極海の海上情報収集・分析能力を大幅に向上。
②ヘリコプター向け監視装備(新型監視カメラ、強力サーチライトなどを導入)の拡充により、偵察能力を強化。
③北極域(北西航路(Northwest Passage)とハドソン海峡)に4つの長距離海上レーダーサイトを新設。
④空中・水上・水中ドローンを取得し、沿岸警備隊の監視範囲を陸海空に拡大。
また、新法「Strengthening Canada’s Immigration Systems and Borders Act」により、沿岸警備隊が軍・警察・国境警備局と海洋情報を共有する責任が強化された。
カナダは世界最長の海岸線を持ち、その70%が北極圏であり、マクギンティー国防相は「北方海域でのプレゼンス強化は国家安全保障の基盤」と強調。カーニー首相も3月に、軍事インフラに3.2億カナダドル、空港アップグレードに2.94億カナダドルなど北方地域の大規模な軍事・社会インフラ強化計画を発表している。
このようなカナダの政策に加えて、アナンド外相はNATOにロシアの脅威評価を中心に据えた北極地域の包括的な安全保障戦略を求めている。外相は、「ロシアは北極に17の軍事基地を持ち、カナダの空域・海域に接近し続けている」と指摘し、北極圏でのロシアのプレゼンスの増加は、カナダにとって継続的な安全保障上の懸念としている。
しかし、カナダがNATOの北極戦略を求める最大の理由は、ロシアよりもトランプ政権の行動による不確実性と脅威とみられている。トランプ氏の「カナダ併合」発言やカナダへの「敵対的」経済政策により、カナダは北極主権への最大の短期的リスクをロシアよりも米国側に感じ始めたと分析されている。
カナダは従来、欧州諸国が北極海航路を「国際水域」とみなす傾向があり、カナダの「北西航路は国内水域」という立場と相容れないため、NATOの北極関与に慎重だった。しかし現在は、ロシア・中国の脅威に加え米国の不安定化により、NATOの関与を歓迎する方向へ転換したとみられている。
このようなカナダの政策転換に対し、NATO内では支持が広がる可能性が高いとみられる。欧州・北欧諸国もトランプ氏のグリーンランド発言などにより、北極でのNATO強化に前向きになっているからだ。冷戦期には、カナダと英国が「ソ連侵攻時のノルウェー支援」を担当していた経緯もあり、北極でのNATOの役割は前例もある。
一方で、ロシアのミサイル能力向上やウクライナ戦争の教訓を踏まえ、北米と欧州の防空をシームレスに統合する必要性が認識されており、北極の安全保障の強化には、NATOとNORADの統合がカギになるとも指摘されている。
“Canada to Strengthen Maritime Security in the Arctic,”(Astri Edvardsen, Published 3 June 2026 – 16:16 HIGH NORTH NEWS)
“Canada Calls for NATO Strategy to Safeguard the Arctic,”(Astri Edvardsen, Published 2 June 2026 – 13:27 Modified 3 June 2026 – 08:02 HIGH NORTH NEWS)