➢概 要
・2023年8月28日に発表された米国防総省(DOD)のイニシアティブであり、同省の国防イノベーションユニット(DIU)が主導し、2025年8月までに数千の無人システムを配備する。
・本イニシアティブは、現在進行中のウクライナ戦争での教訓に基づいている。すなわち、ウクライナは優勢なロシア軍に対抗するため、大量の低コストの消耗型システム(アトリタブル・システム)(月間10,000台と推定)を活用している。
・中国軍は米軍に対して質と量における優位性、すなわちより多くの艦艇、ミサイル、より多くの兵力を有していることから、これに打ち勝つことを支援する
-海上、海中ドローン、自爆ドローンを連接して中国の侵略を防ぐ「地獄の風景(Hellscape)」を作り出す
 ・最初の取り組み「レプリケーター1」:
-全ドメイン(空中、陸上、海上、海中、宇宙)のアトリタブル自律型(All-Domain, Attritable
Autonomous: ADA2)システムを実用化する。
(アトリタブル・システム:システム喪失のリスクを許容できる低コストの消耗型システム)
  -システム例:
・ほぼリアルタイムの情報を提供する自走式ADA2センサーシステムの分散ポッド
・斬新な物流支援や国防総省のインフラ防護を提供する地上ベースのADA2システム
・抗堪性のある通信を提供する宇宙配備のADA2システム
・第2の取り組み「レプリケーター2」:(2024年9月27日公表)
-小型無人航空機システムへの対処(Countering small Uncrewed Aerial Systems:C-sUAS)に焦点を当てる。

➢期待される効果
・「レプリケーター1」は、無人システムを大量に展開し、米軍が比較的安価な多数のシステムに戦闘力を分散させることを可能にする。これにより…
  -米軍の戦闘力を少数の高価なプラットフォームに集中させることを避ける(1つのバスケットに卵を入れすぎるのを避ける)
-敵が米軍の戦闘力を標的にして無力化することを困難にする
-敵にとって不利なコスト交換比率(低コストのアトリタブル・システムに対して敵が迎撃ミサイルなどの高価な対抗手段を使用)を強いる
 ・AIやネットワーク通信の進歩でスウォーミングなどの新しい軍事作戦概念の開発につながる可能性
(多数の無人システムがグループとして協調動作をとってミッションを達成するもの)
 ・航空母艦のような大規模で高価なシステムとは対照的に、レプリケーター・システムはより迅速に構築・配備され、後継機に置き換えられる前に短期間使用・消耗されることを意図
・新しい機能を迅速に導入し、配備、革新するためのDODのプロセスを改善し、米国のドローン産業基盤
の発展を加速する

➢情報公開
・国防総省は、特定の能力やシステムに関する情報を「我々が選択した時間と場所、方法で」明らかにする予定
・現在までに選定が確認されたシステム
 AeroVironment社のSwitchblade 600 自爆ドローン
詳細不明の無人海上ビークルや無人航空機システム、様々なサイズと搭載量の対無人航空機システム
Anduril社のDive-LD uncrewed undersea vehicle

 ➢海軍の進捗状況
  ・2024年5月、第3無人水上艦戦隊(Unmanned Surface Vessel Squadron 3)の「地獄の猟犬(Hell Hounds)」は、最初のグローバル自律偵察艇(GARC: Global Autonomous Reconnaissance Craft)4隻を受領
  ・最終目標は有人艦と無人艦の「ハイブリッド艦隊」を開発すること

参考資料:”DOD Replicator Initiative: Background and Issues for Congress,” (Congressional Research Service In Focus Report, Nov 1, 2024)
“First Replicator Initiative Capability on Track for August, Officials Say,” (Sam LaGrone, January 28, 2025 8:32 PM USNI News)