アサド政権打倒を宣言したシャーム解放機構(HTS)の支配地域は現時点ではタルツゥース海軍基地には及んでいない。しかし、同基地に停泊していたロシア小艦隊(キロ級潜水艦ノヴォロシースク (B261)、ゴルシコフ級巡洋艦アドミラル・ゴロフコ (461)、アドミラル・ゴルシコフ (454)、クリヴァク級アドミラル・グリゴロヴィチ (F745)、2隻の給油艦ヴャジマとヴェルニャ)は12月2日に出港した模様で、ロシア当局によると同艦隊は東地中海で実弾射撃演習を行っているとしている。
この艦隊は、トルコがロシアによるウクライナ侵攻直後にモントルー条約(戦争中に交戦国の艦艇がボスポラス、ダーダネルス両海峡を通航するのをトルコが制限できる)にもとづいて軍艦の通峡を制限する権利を行使したため、黒海艦隊に合流することができないでいる。
代わりに訓練をしつつ地中海沿岸のロシアの友好国との関係強化に取り組んでいるわけだが、過去3ヶ月間にビゼルト(チュニジア)、アルジェ、トブルク(リビア)、アレキサンドリア(エジプト)に寄港したことが判明している。
当面、この小艦隊はシリア国内の不測事態に備えてロシア人及びその資産の保全にあたる準備を保ちつつ東地中海を行動するのだろうが、もしタルツゥースを失うような場合には西へ700マイルほど離れたリビアのトブルクに根拠地を移す可能性が高いのではないかと見られている。さもなくば極寒のムルマンスクやウラジオストクへ回航することになる可能性が高いが、暖かい海に慣れた乗組員には気の毒な話だ。