イランの革命防衛隊の司令官顧問は3月2日、国営テレビでホルムズ海峡を封鎖したと明言、海峡を航行する船舶には「火をつける」とも宣言した。米軍関係者は「物理的に遮断されてはいない」として封鎖を否定している(米FOXニュース)。航行船舶へのロケット弾攻撃などはありうるとしても、現場には米海軍部隊もおり、機雷などで物理的な封鎖は困難だろう。
1 ホルムズ海峡
・全長160km、最狭部の幅33km、水深<100m
・分離通航方式(幅2マイル(3.7km))
・イランとオマーンの領海(12マイル)を通過
-両国とも無害通航のみ認めているが、イランは、軍艦、原子力船、オマーンは軍艦の通航前に許可を 得ることを要求している
・バンダル・アッバース港はイラン海軍南方艦隊の軍港
(北方艦隊はカスピ海のバンダレ・アンザリー)
・ジュベル・アリはペルシャ湾最大の港湾

2 海峡の通航状況
・世界の石油の25%、LNGの20%が通過
・カタールの天然ガス全量、イランの中国向け輸出の90%が海峡経由
-中国の石油輸入の45%が海峡を経由
・海峡経由の原油輸送シェア(2018年)
①中国(18%)、②インド(16%)、③日本(14%)、④韓国(11%)、⑤アメリカ(8%)
・サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦は陸上パイプラインで代替の輸出ルートあり
3 過去の経緯
1980~88年 イラン・イラク戦争での「タンカー戦争」、交戦のピーク時にも航行可能
-1987年、タンカー2隻触雷
1987年7月 「アーネスト・ウィル作戦」開始、米艦艇がクウェート籍のタンカーを護衛
1988年4月 イラン海軍がペルシャ湾の国際水域に機雷敷設、米フリゲート「サミュエル・B・ロバーツ(Samuel B. Roberts, FFG-58)」が触雷-米軍は「カマキリ作戦」で報復

1988年7月 米巡洋艦「ヴィンセンス(Vincennes, CG49)」がイラン航空655便を誤射、290名死亡
2007~08年 イランが米艦艇を挑発、米側海軍演習、封鎖せず
2011~12年 米/EUの制裁に対し、イラン海軍演習、封鎖せず
2018~19年 イラン核合意からの米脱退、イラン弾道ミサイル発射実験、封鎖せず
-オマーン湾でイラン革命防衛隊が船舶に機雷を仕掛けているのを発見
2023年10月 革命防衛隊海軍の嫌がらせ抑止のため米水陸両用戦群がアラビア海で行動
2025年6月 米国イランの核施設を攻撃
-イラン議会は海峡封鎖を決議、最終決定は最高国家安全保障会議とされた
4 封鎖された場合の影響
・閉鎖発表と同時に原油価格は急騰する可能性(原油100ドル超、LNG25-30ドル/MMBtu)

・通過を待っているVLCCとLNGは動けず、保険会社は戦争リスク・プレミアムを発動し、海運料金は急上昇、数隻の船がペルシャ湾に閉じ込められ、供給不足をさらに悪化させる可能性
・サウジアラビアとUAEは、東西パイプライン(サウジアラビア)とハブシャン・フジャイラ・パイプライン(UAE)を使って海峡を迂回

・迂回手段のないカタールは外交的解決のために、トルコとヨーロッパとの関係に頼る
・中国は、イランに海峡の再開を迫る可能性、より信頼できる代替供給国に切り替える可能性
・ロシアはヨーロッパやアジアにさらに割引された原油とガスを販売する可能性
・閉鎖の長期化は、国家歳入の65%が石油輸出に依存し、この石油のすべてが海峡を通過しているイ
ランに最も大きな打撃を与える可能性
・領海を接するオマーン、ガス田を共同所有するカタールとの関係を毀損
・貿易が妨害されインフラ防護等を強いられるGCC(湾岸協力会議)諸国はイランと敵対的立場
5 イランの可能行動と「結論」
・ミサイル等での攻撃(対艦弾道ミサイル、無人機、巡航ミサイル、自爆無人機)
・機雷を敷設(多種:ロシア製MDM-6沈底機雷、中国製EM-52ロケット推進機雷を含む)(5~6000個保有)
・イランが海峡を物理的に封鎖する可能性は低いだろう
