米国国土安全保障省(DHS)は、2025年の北極海域における中国の軍や研究船の活動が「前例のない」レベルに達し、複数の中国艦艇がアメリカの延長された大陸棚の一部海域に長時間滞在し、北極海全域で約50回の有人潜水作業を実施したことを明らかにした。
このような活動の活発化は、科学研究だけでなく航路や資源へのアクセス、将来の戦略的影響力のため、北京が北極に多大な関心を持っていることを示すものだ。中国の野望は、「雪龍2号」のような研究用砕氷船を含む極地対応可能な艦隊を着実に増強する長期的な計画に根ざしており、極地地域での科学・環境・航行研究にも多額の投資を行っている。
今夏の活動は、断続的な展開ではなく数か月にわたる多様な船舶による持続的な運用を維持する新たな段階に入った可能性があり、中国がより恒久的なプレゼンスを確立する意志を示したものと考えられる。
中国の活動増加は、米議会で繰り返し議論の対象となっており、専門家は砕氷船、海上哨戒、同盟関係などの能力拡大がなければ、米国は北極圏での影響力を失うリスクがあると議員たちに警告している。米国、カナダ、フィンランドが締結した近代的な砕氷船建造に関するICE(Icebreaker Collaboration Effort,2024年)協定は、激化する極地競争に対抗する準備態勢を強化するためのより広範な取り組みの一部である。
夏期の中国船舶の活動に対応して、米沿岸警備隊(USCG)は監視と砕氷船のパトロールを強化した。商用砕氷船「アイヴィク(Aiviq)」の取得と就役はわずか8か月で行われ、米国のプレゼンスの強化に寄与した。沿岸警備隊はまた、「ヒーリー(Healy)」を展開させ、10年以上ぶりに複数の砕氷船を同時にハイノースに派遣した。沿岸警備隊の北極域能力は拡大し、2028年には新型の北極セキュリティカッターが艦隊に加わる予定だ。
同時に、哨戒機や「ワーシェ(Waesche)」などが、「極地(Ji Di)」、「探索3号(Tan Suo San Hao)」、「深海1号(Shen Hai Yi Hao)」、「中山大学極地(Zhong Shan Da Xue Ji Di)」、「雪龍(Xue Long) 2」など複数の中国船艇を追跡するために飛行・航行した。中国船艇はチュクチ(Chukchi)海やビューフォート(Beaufort)海、そしてアラスカ沖のアメリカの大陸棚海域に長期間滞在した。
アメリカ沿岸警備隊は、大陸棚海域での中国船舶に対し、海洋法に定める海洋調査の許可を求めるよう繰り返し求めたが、中国の活動の急増は、受容可能な北極海域での「研究」とは何か、大陸棚の権利の拡大はどのように解釈されるのかという法的・戦略的な問題も提起する。
融氷が進む北極では、アジアとヨーロッパ間の航行時間を短縮する新たな海上ルートを開拓され、中国のコンテナ船が、今年9月に寧波・舟山から英国へわずか20日間で航行している。
参考資料:”DHS Warns of ‘Unprecedented’ Chinese Presence in Arctic During Summer 2025,”(Malte Humpert,
December 1, 2025 gCaptain)