6月12日から12日間のイスラエルの攻撃に際し、最初の2日間、イラン海軍の艦艇の大部分は停泊していた。これは、海軍司令部がイスラエルの攻撃目標の優先順位は艦艇以外の他の場所にあると想定していたことを示唆している。しかし、6月14日、主要艦艇のほとんどがバンダル・アッバース軍港から急遽出港し、バンダル・アッバースとゲシュム島とホルムズ島の間の海域を中心に分散した。6月27日現在、艦隊はまだ港に戻っていない。
イスラエルの攻撃目標の重点は、明らかに防空部隊、核兵器関連の研究・開発・科学者、革命防衛隊の主要な指導者、そして弾道ミサイルと無人機の発射・保管・生産施設であった。12日間で35人の戦死者を出したイラン防空軍の防空ネットワークを除き、これら攻撃目標のほぼ全てがイスラム革命防衛隊に属していた。したがって、海軍司令部の海軍部隊が攻撃上の優先事項ではないという判断はおおむね正しかったことになる。
とはいえ、イラン正規軍も例外ではなかった。6月13日に暗殺されたアルテシュ参謀総長モハンマド・バゲリ少将は、極めて有能な強硬派のイデオローグであることから標的にされたのだろう。
6月21日、バンダル・アッバースにある第1海軍管区の建物が攻撃され、施設の警備に当たっていたと思われる3人の兵士が戦死した。ソーシャルメディアによると、攻撃された標的は無人航空機と弾薬を含む武器庫だった。この時には、すでに第1海軍管区の艦艇はバンダル・アッバース軍港を離れていた。
イスラエルは、脅威を及ぼす海軍兵器の攻撃に高い関心を持っていたと思われ、標的リストには、射程650マイルの「アブ・マフディ対艦ミサイル」が含まれていた可能性が高い。このミサイルは、艦艇または沿岸砲台から発射できる。イスラエルはまた、艦艇から発射できることを繰り返し実証してきた長距離無人機の破壊も考えていたに違いない。
イラン革命防衛隊(IRGC)海軍(ネッサ)はより多くの攻撃をうけた。6月21日には、バンダル・レンゲにあるネッサの第5(イマーム・モハンマド・バガー)海軍管区の基地が攻撃された。これは、ミサイル艇を収容するIRGC沿岸の洞窟の疑いのある場所の一つである。このような洞窟は、ここ数ヶ月で公開されたネッサのプロパガンダビデオで頻繁に取り上げられていた。同時に、イスラエルがIRGCの情報収集艦と見なしていた艦艇が、バンダル・アッバース軍港のネッサ地区で攻撃されている。
いまだホルムズ海峡の船舶交通に対する脅威は現れていない。しかし、海軍や革命防衛隊の艦艇は依然海上で行動中であり、海峡海域で潜在的な力を誇示している可能性が高いと考えられる。
参考資料:”Iranian Naval Forces Suffered Casualties From Israeli Air Strikes,” (Published Jun 27, 2025 11:17 AM by The Maritime Executive)