シリアのアサド政権が崩壊した。政権を支えてきたロシアやヒズボラがそれぞれウクライナ侵略とイスラエル軍との戦闘で余力がなくなり、支援が低下したことが大いに関係しているのだろう。そうなると気になるのが「抵抗の枢軸」の一角、イエメンの反政府勢力フーシ派の動向だ。

 イランに支援されたフーシ派は強大な勢力で、2023年末から紅海の海上交通の深刻な脅威となっている。スエズ運河を避けて喜望峰へ迂回することで航海日数が10日ほど増えることから世界的な海運の混乱、運賃や戦争保険料の高騰を引き起こしている。もっとも、狙われるのは親イスラエルと目される国々の船舶であり、紅海で日本郵船の運航船が「拿捕」されたりしている(11/19)。一方で、中国、ロシア、イラン、インド関係船舶が目標になることはまれだ。

 これに対して米英、EU海軍艦艇による護衛作戦が展開されているが大きな成果が上がっているとはいえない。12/1の米中央軍の発表によると、米海軍駆逐艦2隻がアデン湾において米船籍商船3隻に対するフーシ派からの弾道ミサイル3発、攻撃ドローン3機、巡航ミサイル1発を撃墜したとされるが、同時にこれはフーシ派陸上拠点に対する空爆にもかかわらず、いまだ大きな攻撃能力を有していることも意味している。

 本年2月に設置されたいわゆる「人道作戦調整センター」は、「operations@hocc.gov.ye」のアドレスで海運会社にイスラエルとの関係を断つように迫り、一説には「安全輸送料」を要求しているとされる。国連イエメン専門家パネルの年次報告書によると、この「収入」は毎月1億8000万ドルにのぼるとされるが、同時にその根拠が疑わしいことも認められている。正確な額はともかく、フーシ派が脅迫によって「収入」を得ていることは広く知られていることである。

 年次報告書によると2023年11月15日から2014年7月31日までの間、フーシ派の船舶攻撃は134回行われている。米英のフーシ派拠点攻撃で弾道ミサイル15発、対艦ミサイル172発、攻撃ドローン382機、水上ドローン66隻を破壊されたとされる。米海軍は船舶を攻撃した対艦ミサイル66発、攻撃ドローン35機、水上ドローン5隻を迎撃、破壊した。非国家勢力の攻撃力とは思えないほどのものだが、今後これが減衰してゆくのかどうか注目される。

参考資料:“Houthis Threaten Shipping, But Blackmail Earns Them Little,” Published Nov 29, 2024 3:15 PM by The Maritime Executive, “Two Destroyers Defend U.S. Merchant Ships From Houthi Missile Barrage,” Published Dec 1, 2024 11:34 PM by The Maritime Executive