■はじめに

 トランプ政権は、中国との戦略的競争に大きく舵を切った。その競争は、「新冷戦」というよりは「中国の覇権阻止の戦い」というに相応しいものであり、長期にわたることになるだろう。わが国は、米国とともに「自由で開かれたインド太平洋」構想を主唱し、「極東」を対象としていた日米同盟は「アジア太平洋」を経て、今や「インド太平洋」にまで事実上拡大した。

 海上自衛隊は米海軍とともにその最前線を担っているが、この変容する日米同盟に対応できているのだろうか。近年の海洋安全保障の状況を振り返り、日本の課題を考えてみたい。

■航行の自由作戦と「リスク戦」

 中国を戦略的に抑止する最前線を担っているのが米海軍である。航行の自由作戦は、中国が一方的に主張している南シナ海全域の領有権(16年7月の比中仲裁判断で、中国のいう「九段線」の根拠が否定され、埋立てなどの違法性が認定された)の既成事実化を認めないとの米国の強い決意を表すものである。トランプ政権最初の2年間で最低でも9回の作戦を実施しているが、これはオバマ政権最後の2年間の4回に比べて2倍以上の頻度となっている。

 これに対する中国の反応は時に危険な行動として現れた。最近では、18年9月、中国駆逐艦が米駆逐艦「ディケーター」に異常接近し、米艦の緊急操艦で衝突を免れたという事案が起きた。その後米国は、半年間に米海軍艦艇を5回にわたり台湾海峡を通過させて中国をけん制した。

 このような中国側の行動は、航行の自由作戦以外の通常任務中にも起きている。14年8月と16年5月には、中国戦闘機が米海軍哨戒機などに対して衝突寸前の接近飛行を繰り返した。16年12月には、米海洋観測艦「バウデイッチ」が水中無人機(UUV)を中国海軍の潜水艦救難艦に一時奪われる事案も生起している。

 このように、中国は自己の主張のためには高いリスクを厭わない傾向が強く、いわば「リスク戦」ともいうべき行動をとっている。米中間には、すでにホットラインが設置されているが(08年4月)、これらの事案で機能したかは不明であり、信頼醸成の機運もあるものの、両国とも妥協しない姿勢を示していることから、今後とも繰り返される問題であろう。

■南シナ海でも始まった日米共同

 米国は、オバマ政権時から南シナ海における空母打撃群によるプレゼンスを強化し、一方的な現状変更を行う中国をけん制してきた。同政権下での「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」(15年4月)の策定時には、米側から南シナ海での警戒監視活動を自衛隊に求める発言が相次いでいたという(2015/4/28読売新聞)。

 実際に南シナ海での共同活動が実現したのは、護衛艦「いせ」などと空母「カール・ビンソン」打撃群が共同訓練を行った18年3月であり、トランプ政権になってからのことである。このような南シナ海での共同活動は、以後、継続的に実施されるようになっており、沿岸国海軍との共同・親善訓練や戦略的要衝への寄港ともあわせて、日米同盟としての強いメッセージとなっている。

 ただし、メッセージが強くなるほど、中国の反応も強まることが予想される。今後は、中国の危険な行動が共同活動中の日米の艦艇等に及び、その連携が試される可能性も考慮しておく必要があるだろう。

 なお、これ以外にも南シナ海においては18年9月に、海自潜水艦「くろしお」が訓練したことが公表され、19年6月には海上自衛隊と海上保安庁との共同訓練も実施している。これらは、ガイドラインに示された共同警戒監視が水中にも及びうること、中国海軍と法執行機関である海警が連携を深めているように、わが国でも海上保安庁と海上自衛隊の連携が進んでいることをアピールして中国をけん制するものとなっている。

■尖閣諸島での「危険なバランス」

 尖閣諸島周辺では、政府が島の所有権を取得した12年9月以降、中国の公船の活動が活発化している。近年、中国は4隻程度の公船とその支援にあたる海軍艦艇のプレゼンスを維持し、公船は断続的に尖閣諸島のわが国領海に侵入している。この海域では、海上保安庁と海上自衛隊が警戒監視を続けており、いわば「危険なバランス」とでもいうべき状況が長期化している。

 このような中、16年8月には200隻以上の中国漁船が15隻もの中国公船とともに接続水域に入り5日間にわたり領海侵入を繰り返した。中国海軍は海警との連携を強め、海上民兵も含んだ非正規戦である「海のハイブリッド戦」を重視している。また、17年5月には、小型無人機が領空を侵犯したことも確認されており、グレーゾーンにおける非対称戦の兆候を示している。

 尖閣周辺の東シナ海においても、南シナ海同様、中国の危険な行為が起きている。13年1月、中国海軍艦艇が海上自衛隊の護衛艦と艦載ヘリに対して射撃管制(FC)レーダーを照射した疑いがあり、これは不測の事態を招きかねない危険な行為である。

 米海軍もまた、哨戒機のパイロットが東シナ海の公海上で中国漁船らしき船からたびたびレーザー照射を受けている。これも一時的な視力喪失を起こしかねない危険な行為であり、その回数は18年だけで少なくとも20回を数えている。

 このように「膠着状態」が続く中での散発的な中国の危険な行動は、単なる妨害行為というよりは、日米両国のエスカレーションの閾値や、現場部隊の即応態勢や初動対応要領を探っているものと考えられる。

 さらに中国はこの状況をあえて長期化させ、領有権の主張のほかに台湾有事を見据えている可能性もある。つまり、台湾有事となった場合に、台湾防衛に兵力を振り向ける米軍の虚をついて尖閣に上陸占拠して日米を離間させたり、逆に尖閣防衛に米軍の貴重な兵力を引き付けておいて台湾攻略を進めたりするなど様々なシナリオを考えているのではないかと考えられる。

 いずれにせよ、現在の状況は今後も続くであろうことから、 日米間で台湾と尖閣の防衛を一体として捉えて実効性のある備えをとると同時に、中国が小さな兵力で短期間のうちに占領する「小さな戦争」で既成事実を作られることのないよう、わが国として隙のない態勢を維持しなければならない。

■「切れ目」の見えた中東派遣問題

 「自由で開かれたインド太平洋」構想において、中東までのシーレーンの安全確保は大きな課題である。15年の平和安全法制成立で「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目ない対応」が出来上がったとされた。しかし、最近の海上自衛隊の中東派遣を巡る議論で、派遣の根拠となる適当な法律がなく「切れ目ない対応」に「欠落」があることが再認識された。

 考えられる法律のうち、「海賊対処法」は、革命防衛隊の関与が疑われる攻撃事件は対象外、仮に「重要影響事態」となっても自衛隊が可能なのは後方支援のみでタンカーの安全確保はできない。また、限定的な集団的自衛権が認められる「存立危機事態」がペルシャ湾で認定されるには高いハードルがある。最後に「海上警備行動」だが、これは警察権にもとづく行動なので、主権免除のある軍艦や外国公船に対処するのには無理がある。

 したがって、この「欠落」を埋めるには平時における自衛権の発動が必要ということになる。この問題は「タンカー戦争(84~88年)」や「湾岸戦争(91年)」の時からの宿題である。「自由で開かれたインド太平洋」を形のあるものにするには、この問題を避けて通ることはできないだろう。

■異形の中国海軍

 以上のような状況を踏まえて中国海軍への対応を考える。

 中国海軍は、接近阻止・領域拒否戦略の主力となっている。その戦力は、米海軍の優勢を覆すには至っていないものの、一部の作戦領域においては肉薄しており、米軍全体を撃破できなくとも、一定の海域での行動を妨害したり、局地戦で一時的な優勢を獲得し限定的な目的を達成したりすることは可能とみられる。

 中国海軍は、その近代化や空母の建造が注目されがちだが、その「戦い方」にも際立った特徴がある。

 第一に、一般的な海上作戦能力に加えて、サイバー、宇宙、電磁波、無人機などの領域における攻撃能力を強化し、優勢な敵の能力発揮を妨げる非対称戦を重視していることである。

 第二に、一方的な主張を実現するために高いリスクを伴う行動をためらわないことである。これまでのところ相手の自制にも助けられて武力紛争には至っていない。中国は、武力紛争にエスカレートしないよう、相手のリスクの受容限度を見極め、ギリギリの危険な行動で既成事実を積み重ねようとしている。このような「リスク戦」には、常に誤算や偶発の恐れが伴うことを忘れてはならない。

 第三の特徴は、中国が「海のハイブリッド戦」を志向していることである。尖閣での領海侵入の例のほか、09年3月、海南島南方の公海で調査活動を行っていた米海軍音響測定艦「インペカブル」が、5隻の中国船から妨害をうけた事案がある。中国側は、海軍艦艇及び公船3隻、漁船2隻を含み、うち1隻の漁船は同艦の音響アレイを奪おうとした。

 「海のハイブリッド戦」は、民間人に偽装した海上民兵などや、安価な武器と民間船舶による非正規戦であり、当事国は不関与を装えるので、正規海軍が対処しにくい厄介な戦いといえる。

■対中国抑止とエスカレーション管理

 このような中国海軍を抑止するにはどうすればよいか。 

 エスカレーションには三つのタイプがあり、これらが複合して起こるとされる。

 第一に、意図的なエスカレーション。これは、行動国が成功を見込んで相手国の閾値を超える行動を意図的に起こすタイプである。日米同盟の強固さを示すことで中国を抑止することになる。

 第二は、誤判断によるエスカレーションで、行動国が相手国の閾値を誤って判断して行動を起こした結果生じるものである。これには一般的な抑止は効かないので、平素の日米の対応・対話を通じて中国に適切な情勢分析をさせ、日米の閾値を正しく認識させることがカギとなる。

 第三は、偶発的なエスカレーション。これは、現場部隊に対する指揮統制を強め、要撃や接近要領の改善、あるいは適切な部隊行動基準(ROE)を機能させることで発生の可能性を減らすことが期待できる。

 中国に対する抑止は、これまで米軍の全般的な優位性で中国の行動を封じるという「拒否的抑止」で成り立っていたが、中国は、自身の戦力アップで米軍の優位性が揺らぎ始めていると考えている可能性がある。

 また、中国は非対称的な強さとして、ハイブリッド戦能力や、領土保全を核心的利益とする政府の強い意志、そして米軍などの優位な作戦能力の発揮を妨げるサイバーや宇宙各領域、無人機の能力を持っている。これに対して、日米が無人島の防衛を軽視したり、死傷者の発生を忌避するなどの非対称な脆弱さを見せた場合には、全般的な優位性があっても、エスカレーション管理が機能しない場合があり得る。この点において、中国は三戦、特に輿論戦や心理戦で相手国の脆弱性を攻撃してくる可能性が高いので注意が必要である。

■宇宙とサイバーがもたらす不安定性

 さらに、宇宙とサイバー領域におけるエスカレーション管理の構造的な不安定性も考慮する必要がある。

 作戦に不可欠な通信システムや情報収集、監視センサーの多くは軍事衛星として十分に防護されることなく宇宙に配備されている。また指揮統制能力の多くはサイバーに依存しており、その脆弱性が課題となっている。これらが攻撃側の魅力的なターゲットとなり得ることは当然である。重要な作戦インフラの脆弱性、これが第一の構造的な不安定性である。

 第二の不安定性は、攻撃側が破壊規模の可変性を欠いていたり、被攻撃側の対応に比例性を欠く場合である。宇宙やサイバーのような新たな戦闘領域では、このような可変性や比例性をもち、攻撃や反撃を適切に制御できる能力を持つ国は少数であろう。このような場合、被攻撃側は、敵の攻撃により生じる損害を忍受するか、望ましくない軍事的政治的コストを伴う可能性のある不均衡な反撃で対応するかというジレンマに陥ることになる。

 被攻撃側の指揮統制システムなどの作戦インフラが攻撃側の意図した範囲を超えて大きく麻痺した場合、エスカレーションの管理が非常に困難になることは当然である。

 人民解放軍は、すでに対衛星ミサイルなどの対宇宙攻撃能力の開発を急いでいる。また、サイバー戦については、攻撃的な「サイバー空間優位」の概念を持つとされる。これは、紛争の初期段階で相手の指揮統制と後方支援ネットワークを混乱、麻痺させ、戦場での優位性を得ようとするもので、エスカレーションの管理を妨げる危険な概念といえる。

■提 言

 以上述べた課題のうち、サイバーや宇宙、そして中国の非対称戦能力をオフセットするための方策や三戦に対抗する戦略的コミュニケーションの強化については、「防衛計画の大綱」に盛り込まれていることから、これら以外の課題について述べる。

■自衛権の「ディマースイッチ」

 平和安全法制では、グレーゾーンにおける対応について、現行法令の発令手続きの迅速化が図られたのみで根本的な改善はなされなかった。中東派遣問題で述べたとおり、海上警備行動における権限は、外国軍艦や公船に対しては警告と退去要求ができるのみであり、武力攻撃発生時とのギャップは依然大きいままである。言いかえると自衛隊には「有事の自衛権」と「平時の警察権」の「オンオフスイッチ」しかないことになる。

 イランの革命防衛隊や中国の海警などが関与してくるグレーゾーン事態では、「平時における限定的な自衛権」を行使できるような「ディマースイッチ」がないと有効な対処はできない。外国軍艦や法執行機関などの公船に、国際法上の均衡性と必要性の原則に基づいた適正な自衛の措置がとれるようにする必要がある。

 なお、このような法整備は入口に過ぎない。以下述べるように法整備を踏まえた部隊行動基準(ROE)を整備し、作戦計画を立案し、訓練して初めて法整備の効力が発揮されるものである。

■部隊行動基準(ROE)の実効性向上

 中国の「リスク戦」や「ハイブリッド戦」に対抗するには、政府の意図を現場の部隊に徹底させることでエスカレーションを管理する必要がある。また、南シナ海などでの日米共同では、米海軍部隊がどのような基準で行動しているのか知悉していないと効果的な連携や安全確保はおぼつかない。

 したがって、整備された法に基づくROEを定め、その実効性を高めることが必要である。そのためには、第一に自衛隊のROEと警察や海上保安庁の対処要領との突き合わせを行ない、具体的な連携要領を確認する。警察権と自衛権との連接の確認である。

 第二は、自衛隊と米軍その他の外国軍隊との連接の確認である。各国のROEリストを比較して近傍で活動する部隊の行動基準や奇襲を受けた場合の対処要領を知悉しておくことは、限定的な集団的自衛権のもと行われる「ユニット防護」でも必須である。

■尖閣、台湾有事の日米共同計画

 日米共同作戦計画がなければ、訓練も現実的なものとはならず、折角のガイドラインも宝の持ち腐れになってしまう。

 わが国は尖閣周辺での突発的な中国との軍事衝突を想定し、日米共同作戦の策定を極秘で米国に度々打診したが、米政府高官や米太平洋軍は首を縦に振らなかったとされる(2014/10/28朝日新聞)。米政府内には「無人島」をめぐる日中の軍事衝突への「巻き込まれ」を警戒する見方があるのだろう。

 このような懸念を払拭し必要な計画を立案するため、尖閣諸島は先島諸島や沖縄防衛と一体の問題であり、台湾防衛とも直結することを米側に理解させる必要がある。その上で日米共同のあり方を議論し、紛争前のエスカレーション管理を含んだ日米共同作戦計画の立案に取り掛かる必要がある。

 このことは朝鮮半島に関しても同様である。

 17年の北朝鮮危機では、最大3隻の米空母が同時に展開して柔軟抑止選択肢(FDO)が実施された。この際、自衛隊との共同訓練も行われ、ガイドラインに示す「共同ISR(情報収集、警戒監視、偵察活動)」、「アセット(艦艇、航空機等)防護」などが実際に機能することが証明された。これは、将来、中国を巡る危機で米空母を展開させる場合にも、中国の妨害・阻止に同様に日米共同で対抗するとの明確なメッセージとなった。

 しかし、米空母打撃群を含む日米韓共同訓練の検討の過程で、韓国から有事に設定される作戦区域(KTO)への自衛隊部隊の入域が認められなかったとされており(2017/11/11韓国中央日報)、朝鮮半島危機発生時の邦人輸送などの大きな課題となっている。日韓関係の現状を踏まえた朝鮮半島有事の日米共同作戦も促進する必要がある。

■エスカレーション管理手段の充実

 中国海軍の特徴や、エスカレーションのメカニズムを考慮すると、重層的なエスカレーション管理の取組みが必要である。

 エスカレーションのうち、意図的なもの、誤判断によるものを防ぐには、米国と同盟国が盤石な態勢を維持しており、中国が武力を行使する「機会の窓」はないということを理解させるための軍事態勢の維持が不可欠である。その上で、お互いの行動方針やエスカレーションの閾値、軍に対する指揮統制能力の現状を理解するための対話などいわゆる信頼醸成に万全を期す必要がある。

 また、偶発的なエスカレーションの発生や、万一発生した場合の拡大を防ぐための方策も重要である。例えば、14年11月、米中は海域および空域での衝突を回避するための行動規則とともに、軍事活動の相互通知に関する措置に合意し、その後も実効性の向上に取り組んでいる。また、14年4月には西太平洋海軍シンポジウム(WPNS)のメンバー国(21か国)海軍が「洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準(CUES)」を採択した。日中間でも、18年5月に「日中防衛当局間の海上・空中通信メカニズム」を確立することに合意した。

 これらの措置にもかかわらず、中国の危険な行動がなくならないのは既に述べたとおりであり、既存の取組みの強化やその運用の改善に取り組む必要がある。

 例えば、CUESの内容は安全を確保するための一般的手順と通信方法などにとどまり、適用も公海上の軍艦、軍用航空機のみで法執行機関の公船は含まれない。何よりも冷戦期に定められた海上事故防止協定(INCSEA)に比べると行動を制約する規則は限定的で、非拘束的である。

 既に述べたような中国の危険な行動を抑止する観点から、中国とASEAN間の「南シナ海行動規範(COC)」の議論も視野に入れつつ、実効性を高める取り組みに着手する必要がある。

■あとがき

 ここに挙げた提言は、予算がつけば何とかなるというものではない。いずれも政治のリーダーシップや本気度が求められるものばかりである。しかもいくつかは以前からの宿題であり、その意味では古くて新しい課題といえるかもしれない。

 「自国のタンカーは自力で防護すべきだ」とか「自分の島を自力で守る」などは当然のことである。しかし前者は今もって十分に果たすことができていないし、後者についてもその守りを固め始めたのはつい最近のことだ。台湾に至っては長いこと忘れたふりでもしていたのかという感じさえする。

 「自由で開かれたインド太平洋」構想は良い。しかし国際社会は中国の「一帯一路」と比べてその「本気度」を見極めようとしている。もちろん中国のなりふり構わぬ海洋進出を是とするわけではない。しかし、日米、特に日本の本気度は見劣りしていないだろうか。

 日米同盟がインド太平洋へ拡大してゆく、それは単なる「変化(change)」ではなく「変容(transformation)」である。しっかりと中国を抑止しなければならない。そのためには、まずわが国自身が、安全保障を健全な常識論で語れるようにならなければならない。そうなって初めて我が国が米国と役割分担をできるようになり、海の日米同盟の実を上げることができるのではないかと考える。

※本稿は(一社)日本戦略フォーラム季報2020年4月号に掲載された拙稿を許可を得て転載したものです。