台湾は2025年の国防報告書で、中国の上陸侵攻に対抗するため、対艦ミサイル、攻撃ドローン、新たな沿岸防衛部隊などの領域拒否能力の向上に取り組んでいることを強調。中国が近年、新型強襲揚陸艦、海軍航空、上陸用バージの導入により、台湾侵攻能力を劇的に向上させたことに対し、台湾は非対称戦への投資をし多くの近代化プロジェクトに取り組んでいる。

ミサイルの大量生産

台湾は、2022年から26年にかけて「海空戦力強化計画」を推進。この80億ドルを投入する計画のもと、9種類の対艦ミサイル、巡航ミサイル、地対空ミサイルの大量生産とミサイル備蓄の増強を行っている。これには、超音速の雄風(Hsiung Feng)III対艦ミサイルや、最大1,200kmの射程を持つ改良型雄風IIE巡航ミサイルが含まれる。

雄風シリーズのミサイルは、中華民国海軍の海豊(Haifeng)対艦ミサイル旅団に配備され、機動地上配備ミサイル部隊の大部分を占めている。また、水上戦闘艦や増強するミサイルコルベット部隊にも搭載されている。沱江級コルベットは12発の雄風IIおよび雄風III対艦ミサイルを搭載可能であり、匡華VI級ミサイル艇は4基の雄風IIを装備している。

シーソードやスカイボウなどの対空システムも量産計画の優先対象となった。報告書は、移動式雄風シリーズ対艦ミサイルランチャーのような「高価値アセット」の防護をこれらのシステムによって行うとしている。

中国の軍事活動を監視する組織「PLA Tracker」は、これらのミサイルの大量生産が台湾の領域拒否能力を大幅に強化するとし、「台湾が人民解放軍の航空優勢に挑戦し、人民解放軍海軍(PLAN)艦艇を識別・追尾・攻撃する能力は、中国からの封鎖や侵攻を撃破する能力の決定的な尺度となり得る」と述べている。

国防省は、2026年からの後続プロジェクトである「防衛強靱性強化および非対称戦闘能力計画」に追加予算を割り当てることを検討している。この計画では、ミサイル、地雷(機雷)そしてドローンを優先することになるだろう。

対艦ミサイル旅団および沿岸防衛部隊

台湾の領域拒否能力は、ミサイル増産とマッチした特に海兵隊内の部隊態勢の見直しや無人システムに対する多軍種のアプローチにより一層強化されるとみられる。

今年初め、中華民国海兵隊は第66海兵旅団を沿岸攻撃作戦支援が可能な部隊に変革する計画を発表した。国防報告書によれば、旅団の編成は新たな任務の要求に応じて『ドローン大隊』と『火力大隊』に適切に調整されたとしている。また、海兵隊も中国の侵攻時に首都で起こりうる斬首攻撃に備え、台北周辺の戦略的拠点に配備されている。

2026年には海軍が海封(Haifeng)対艦ミサイル部隊の数を増やし、ミサイル艇や追加の海上偵察部隊と共に沿岸戦闘司令部を編成する予定だ。この新編成には、2029年までに完全稼働予定の400基のRGM-84L-4ハープーン・ブロックII中隊も追加される。新しい基地はすでに建設中で、彼らの任務は紛争発生時に24マイルの接続水域の安全を保つことにある。これらすべての取り組みは、重要な地域や水路に火力を集中させることで侵攻する中国の計画をさらに複雑にし、台湾の沿岸防衛に役立つだろう。

ドローンの調達

今年の防衛報告書では、既存の1,600機に加え、2028年までに陸軍、海軍、空軍で13種類5,000機のドローン取得を目標としていたが、最近この数を10倍に増やして50,000機にする計画を発表した。

台湾企業は、国産設計の無人航空機や水上艦艇でこの成長市場に対応している。台湾の地元企業「サンダータイガー(Thunder Tiger)」がこの大規模な調達プロジェクトの有力候補の一つとなっている。同社はシーシャーク水上ドローンの生産を拡大する準備ができている。

米国企業も台湾軍にドローンを販売している。今週、台湾の国防相ウェリントン・クーはアンドゥリル・アルティウス-600M(Anduril Altius-600M)の運用を視察した。台湾はまた、アンドゥリル社のバラクーダ-M(Baraccuda-M)の配備と共同生産も予定している。

大型トラックやハンヴィーのような移動式発射プラットフォームから発射可能なドローンにも大きな投資がなされている。ウクライナの『撃ちっぱなし(Shoot and scoot)』戦術については多くの報告がなされており、これこそ台湾が実行すべきことであると考えられている。5万機のドローンはさらに上積みを必要とするだろう。

参考資料:”Taiwan Defense Report Highlights Area Denial Progress,”(Published on 23/11/2025 By Aaron-Matthew Lariosa NAVAL NEWS)