台湾の事実上の防空識別圏(ADIZ)への中国人民解放軍の航空機侵入は、4月も高頻度で続いている。中国は、台湾の脅威に対する認識を難しくし、対応の閾値を上げるために、ADIZの侵入頻度を高くしているとみられる。
中国が台湾周辺で大規模な合同軍事演習「ストレイト・サンダー2025A」を実施した今月初めには侵入が急増した。このような急増は、中国が台湾に対する威圧手段(coersion toolkit)のひとつとして、事前に計画された封鎖演習のやり方を標準化するにつれて、より一般的になる可能性が高い。
このADIZへの侵入の新常態(ニューノーマル)は、台湾と黎政権に対する中国の威圧を強化する多くの要素のひとつとなっている。中国人民解放軍の航空機によるADIZの侵入が常態化すると、威圧活動に対する台湾の対応を引き起こす閾値が上昇し、台湾が実際の脅威を適時に評価し対応することがより困難になる。台湾は、資源を圧迫し人員を疲弊させるADIZの侵入に対応するために、人員を待機させなければならない。
中国は、台湾が主権を主張する政策を実施することを威嚇、抑止するために、台湾周辺での軍事活動を調整している。台湾の事実上のADIZへの中国人民解放軍の航空機の侵入はほぼ毎日のように発生しており、通常、台湾の政治的活動に対する中国の反応のバロメーターとして機能している。ADIZの侵入の急増は、台湾と外国の高官との高官会議や台湾の指導者による主権の表明など、中国が反対する台湾の政治的事件に対応することが多くなっている。