日本で初めてカレーを食べたのは山川健次郎という人で、明治4年のことだったそうだ。明治5年にはカレーが料理本で紹介されている。ちなみに明治天皇が牛肉を初めて食されたのもこの年で、横浜に牛鍋屋が出来て5年後のことである。明治15年の「龍驤」の脚気事件(南米、豪州方面の遠洋航海に出発したものの、乗組員397名中169名の脚気重症患者が出て25名が死亡した。)を受けて、海軍の食事が洋食化した。
日本最初のカレー屋「風月堂」が上野で開店したのが明治19年で、同22年、海軍の「五等厨夫教育規則」にライスカレーの作り方が掲載されているので、このころには海軍でもカレーを食べていたのではないだろうか。太平洋戦争中においても陸軍、海軍ともによくカレーが作られていたといい、終戦とともに復員した兵士たちにより、一挙に日本の津々浦々までカレーの味が広まったといわれている。
ところで最近、「海上自衛隊の艦艇では、長期行動中に曜日の感覚を忘れないために金曜日の昼食にカレーを出す」ということを聞くが本当だろうか。曜日を忘れないためなら、金曜でなくても良いし、カレーでなくても良いのではないか。
これは、元々土曜が半ドンだった時代、午前掃除、終わってカレーライスの昼食をとって上陸、という1週間の区切りがあった。給養員長が「大引き」(連休)になると、土曜の昼食の出来が気になるので、前もって作っておけるカレーにしたことも関係しているだろうし、食卓番の後片付けが簡単で済み、上陸が遅れなくてすむという利点もあった。そして何より人気のメニューだったのはもちろんである。その後、週休二日制に移行する過程で、人気の土曜のカレーが金曜のカレーになったのである。
たしかに、長期海外派遣された乗組員達が、カレーを食べて「ああ1週間経った」とか、「あと3回カレーを食べたら日本だな」とか感じるのは事実だろうが、順序は逆だ。