EUは、5月20日、ウクライナ戦争開戦以来17回目の制裁パッケージを承認した。今回は、ロシアの「影の船隊」タンカー、その運航者、ロシアの石油生産者を強く標的にした「戦争開始以来最も広範なもの」であるとしている。

最終リストには、ロシアの石油取引に使用された第三国の189隻の船舶が含まれており、現在の342隻から大幅な増加になる。もっとも、専門家によると取引に従事した船舶は800隻以上にのぼるという。

EUによると、制裁が始まって以来、ロシアの石油収入は約430億ドル減少し、本年3月のロシアの歳入額は、2023年3月と比較して14%近く、2022年3月よりも20%減少しているという。

今回は「影の船隊」に加えて、新たに17名の個人と58の団体が追加されたことで、総計2,400以上の個人と団体に制裁を課すことになる。これには、タンカーの運航者、石油会社、ロシア軍にドローン、武器、弾薬、装備、部品、後方支援を供給する企業が含まれている。EUはまた、ロシアを支援する外国企業も標的にしており、今回は中国の3社、ベラルーシの1社、イスラエルの1社を追加している。

一方、英国による制裁措置には、ロシアの軍事、エネルギー、金融セクターの100の企業と個人、さらに18隻のタンカーがリストアップされている。英国は、先週、110隻の「影の船隊」タンカーも制裁に追加したと発表した。

フィナンシャル・タイムズ紙は、英国人ジョン・マイケル・オーメロッド(John Michael Ormerod)氏が2022年12月から2023年8月の間に少なくとも25隻のタンカーを購入し、7億ドル以上を費やしたと報じた。同紙は、タンカーはマーシャル諸島に船籍を置かれたが、露石油会社ルクオイル(Lukoil)傘下のドバイに本拠を置くアイガー・シッピング社向けであり、タンカーはロシアから1億2000万バレル以上の石油を輸送したとしている。オーメロッド氏の弁護士は、タンカーが制裁を受ける前に同氏は関与を終わらせたと述べた。

ロシアの石油取引をコントロールしようとするG7の努力は、原油価格が60ドルの価格上限を下回ったことで困難に直面している。英国は、パートナーと協力して石油価格の上限を引き下げることを認め、「プーチン大統領の石油収入を打撃することで痛手を与える」ために、上限価格を生産コストに近づけることを検討していると述べた。

参考資料:”UK and EU Increase Sanctions on Shadow Fleet Tankers and Enablers,” (Published May 20, 2025 3:57 PM by The Maritime Executive)