イスラエルとイランの間で停戦が成立したことで、米中央軍は、戦略的に大きな影響を及ぼしうるイランの機雷によるホルムズ海峡の封鎖が起きないか監視していると、中央軍副司令官であるブラッド・クーパー中将は、同司令官に任命されるための上院軍事委員会の公聴会で述べた。

ホルムズ海峡はオマーン湾とペルシャ湾を結んでおり、世界の石油貿易の鍵を握っており、2024年には、2,000万バレル以上の原油が同海峡を通過した。米エネルギー情報局(EIA)の6月の見積りでは、「この海峡は、世界最大の原油タンカーが航行できるほど深く、幅も広く、世界で最も重要な石油のチョークポイントの一つである。海峡を通じて大量の石油が輸送されており、海峡が閉鎖された場合の代替策はほとんど存在しない」とされている。

もしイランが水路をうまく閉鎖したとしたら、それはおそらく機雷によるものだろう。このシナリオで航行の自由を回復することは可能だが、クーパー中将は、機雷戦に関してはすぐに作戦の効果が上がることはなく、数か月かかる可能性があると警告している。

クーパー中将は、「確かに複雑な問題だ。イランは何千もの機雷を保有しており、対象となるのはかなり狭い海域だ。ただ、我々は現在、世界最大の対機雷戦部隊を中東に持っている」と述べた。

イラン議会は、ドナルド・トランプ大統領がイスラエルとイランの停戦を発表するのに先立ち、ホルムズ海峡を封鎖することに賛成票を投じたが、最終的にはイランの最高国家安全保障会議が決定を下すことになる。

海峡が閉鎖された場合、経済的および軍事的な影響がある。ホルムズ海峡には、世界の石油の1/4、天然ガスの20%が流れていると、ニューヨーク・タイムズ紙は報じている。イランが海峡に機雷をまけば、米国ではガソリン価格が上昇する可能性が高く、原油の大部分を中東に依存しているアジア諸国も打撃を受けるだろう。

ホルムズの閉鎖は、ペルシャ湾に米海軍の艦艇を閉じ込める可能性もある。アトランティック・カウンシルによると、イランは約5,000から6,000個の機雷を保有している。イランは、沿岸防衛システムや無人航空機を使ってタンカーを攻撃することもできる。

「タンカー戦争」

イランが最後に海峡で機雷を使ったのは、イラン・イラク戦争中の1984年である。8年間の紛争中、イランとイラクは1984年から1988年までの「タンカー戦争」として陸戦を海に波及させた。

機雷が最初に敷設されたのは1984年だが、触雷による被害の大部分は1987年に起こった。リベリア船籍の「プリムローズ号(Primrose)」と、ソ連船籍の「チュイコフ元帥号(Marshal Chuikov)」がそれだ。

1987年7月、アメリカとクウェートは、「アーネスト・ウィル作戦」として米海軍艦艇がクウェートのタンカーを護衛することを認める協定を締結した。駆逐艦「キッド(Kidd, DDG-993)」、巡洋艦「フォックス(Fox, CG-33)」、フリゲート「クロンメリン(Crommelin, FFG-37)」が護衛する最初の船団で、タンカーが触雷し、海軍は機雷対策を強化するため作戦を一時停止せざるを得なかった。

1988年にはフリゲート「サミュエル・B・ロバーツ(Samuel B. Roberts, FFG-58)」が触雷したが、乗組員の努力で沈没は免れた。その4日後、アメリカは「カマキリ作戦」を開始してイランの石油インフラを攻撃したが、イランの民間機を誤って撃墜してしまった。結果的に、カマキリ作戦、イラクの地上戦での勝利、そして民間機事故により、イランは停戦に同意した。

2019年、海軍はホルムズ海峡のすぐ外側のオマーン湾でイラン革命防衛隊が船舶に機雷を仕掛けているのを発見し捕らえた。革命防衛隊海軍はまた、当時、海峡の商船に乗り込み、嫌がらせを試みていた。

最近の例としては、強襲揚陸艦「バターン(Bataan、LHD5)」水陸両用戦グループは、2023年10月7日のハマスによるイスラエルへの攻撃の前、革命防衛隊海軍の嫌がらせに対する抑止力の一環としてアラビア海を行動した。

参考資料:”U.S. Central Command Nominee Cooper Outlines Risk of Strait of Hormuz Closure to Senate Panel,” (Heather Mongilio, June 25, 2025 6:23 PM – Updated: June 25, 2025 10:04 PM USNI News)