ロシア以外では、北極圏諸国に対する最近の中国の投資のほとんどが停滞しているか、失敗している。ハーバード大学とカナダのトレント大学の研究者は、研究ステーション、インフラの建設と所有、エネルギープロジェクト、鉱業など、北極圏における中国の経済活動を報告書にまとめた。

この結果は最近、ハーバード大学のベルファー・センター(Belfer Center)のポリシーブリーフに掲載されたもので、中国が「北極圏を買い占めている」という一般的な言説と矛盾している。研究者によると、北極圏への投資に対する中国の野心と計画のうち、完全に実現したのはごく一部に過ぎないという。また、ロシア以外では、他の北極圏諸国に対する最近の中国の投資は停滞しているか、失敗している。

報告書は、「北極圏への中国の投資について心配するべきではないと主張しているわけではないが、投資の規模と範囲は、一般に考えられるよりも小さいこともわかっている」としている。そして、最近の中国の投資イニシアチブは、ロシアを除く北極圏諸国でますます逆風にさらされているという。

特に、デンマーク王国の一部であるグリーンランドに対する中国の関心はこの最良の例のひとつである。グリーンランドに対する中国の影響力については多くの議論があったが、中国が『グリーンランドを買収する』という話は、事実に反しており、提案された8つの投資のうち、7つは失敗したか、実現しなかったことが分かっている。中国の投資に関する誇張された主張は、デンマークが中国の侵略からグリーンランドを守れなかったというトランプ政権の主張など、さまざまな政策やスタンスを正当化するために使用されてきた。

主な調査結果

ロシア:

・中国の北極圏への投資額は、北極圏諸国の中で群を抜いて多い。

・中でも注目すべきは、 北極圏級のLNG船で欧州・アジア市場にガスを供給するヤマルLNG(液化天然ガス)プロジェクトである。

・西側の経済制裁により、ロシアは中国を北極圏の開発に必要な経済パートナーと見なしている。

・ロシアと中国は、石油・ガス生産とインフラ建設への大規模な投資で協力してきたが、提案されたいくつかのプロジェクトはうまくいかなかった。

北欧諸国:

・ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、アイスランドは中国との関わりが最も顕著である。

・中国は北極圏への投資、エネルギープロジェクト、科学研究に関与してきたが、近年、多くのプロジェクトが行き詰まったり失敗したりしている。

米国:

・米国は世界の他のどの国よりも多くの中国の外国直接投資を受けているが、アラスカへの中国の投資は非常に限られている。

グリーンランド:

・グリーンランドの鉱物、石油、ガス資源に関心のある中国企業は、2010年代にグリーンランドに関与したが、提案された投資のほとんどは失敗に終わった。

カナダ:

・1つのニッケル採掘プロジェクトを除いて、カナダの北極圏に対するすべての中国の投資は失敗したか、長年にわたって停止している。

北極圏への投資に関する中国の野望と計画のごく一部しか実現していない理由としては、地政学的および国内政治的な障害、安全保障上の懸念、環境上の懸念、ウランを含む鉱石の採掘の制限などが指摘されている。また、中国企業はプロジェクトの経済性に関心を持ち、経済的な理由で中国の投資が棚上げされたように見える例もある。さらに、北極圏諸国が、この地域へのさまざまな形態の外国直接投資に関連するリスクに目覚めたことも報告書は示唆している。

参考資料:”Report: Most Chinese Investments in the Arctic Have Not Fully Materialized,” (Published at: Jun 25 2025 – 16:56 / Updated at: Jun 26 2025 – 13:05 HIGH NORTH NEWS)