イランが6月のイスラエルとアメリカの攻撃によって引き起こされた重大な損害から回復しようとしている今、フーシ派は紅海にさらなる混乱を引き起こす能力を持っているかどうか、そしてそれを行使する意図があるのだろうか。
表面的には、フーシ派の好戦的な意図は衰えていない。フーシ派の首席報道官ヤヒヤ・サリエ准将は、6月22日のアメリカのイラン攻撃の直後、イスラエルとアメリカの艦艇はイエメン海域から去るべきだと警告し、イエメンは公式にイスラエルとアメリカに対する戦争に参戦すると述べた。6月24日、フーシ派の政治スポークスマン、モハメド・アル・ブハイティは、フーシ派は停戦協定に拘束されておらず、ガザでの停戦が達成されるまで、イスラエルに対する作戦を続けると宣言した。
それにもかかわらず、フーシ派は、イスラエルがイランに対して開始した戦争の傍観者であり続け、イスラエルに数発のミサイルを撃ち込んだものの、それ以外はおおむね攻撃を止め、以前にアメリカと合意した停戦を守った。トランプ政権は5月、イスラエルのガザ戦争に対抗して開始された紅海の船舶に対する作戦を停止することに同意したと述べ、フーシ派に対する2カ月にわたる爆撃作戦を停止した。
フーシ派は、紅海の船舶に対してそのような攻撃をしかけていないが、フーシ派はイスラエルに対して時折、無人機やミサイル攻撃をしかけ続けており、その全てが単発の攻撃であり迎撃されてしまっている。したがって、レトリックは依然として好戦的である一方で、実際の行動は敵対的な活動の縮小を示唆している。
この理由の一つは、間違いなく、アメリカとイスラエルのイエメンのフーシ派標的に対する攻撃の直接的な影響で、ミサイル、無人機や発射装置の備蓄を破壊され、その被害がフーシ派に停戦を求めるよう促したことだ。フーシ派は戦力を回復する必要があるのだが、イランからフーシ派に貨物を密輸する船の押収品から判断すると、彼らは重要なミサイルと無人機サブシステムに関して、依然としてイランからの供給に依存していることは明らかだ。
この供給も、対イラン12日間戦争の間、中断された。3月17日と4月29日、アメリカとイギリスは、フーベイシ・スチールが支配する二つの工場を攻撃したが、これは、あまり洗練されていないミサイルと無人機のハードウェアを自作するフーシ派の能力の鍵であった可能性が高い。
政治的には、フーシ派も被害を受けている。イランはフーシ派の側に立つことに失敗し、フーシ派の目から見れば、ガザ作戦の重要な瞬間に支持を得られなかったことで、パレスチナの大義を失望させた。フーシ派は、自分たちが「抵抗の枢軸」の中でまだ抵抗している唯一のメンバーであり、大義のために払っている相当な犠牲は役に立たず、評価もされていないと感じたに違いない。フーシ派指導部は、イスラエルの攻撃の直接の標的となっただけでなく、フーシ派が支配するホデイダ、ラス・イサ、サリフの港に対するイスラエルの損害を通じて、彼らは、政権の治安努力が依存している関税収入を得る能力の多くを失った。
しかも、フーシ派は、イスラエルがイランで達成したのと同じ程度の、イエメンでの自分たちの指導構造に浸透し破壊することにイスラエルが焦点を切り替えるのではないかと恐れている。そしておそらく、派閥だらけのイエメンは、イランがそうであったように、そのような諜報作戦に対して脆弱だ。イスラエルの国防大臣イスラエル・カッツは、確かにそう脅かした。
これらのストレスと緊張は、イエメン国内の政治に反映されている。そこでは、フーシ派の権力掌握は、外部の観察者に見えるほど安定しておらず、亀裂が忠誠の切り替えにつながる可能性がある。
フーシ派指導部内では、最近の挫折への対応をめぐって緊張が高まっている。しかし、弱点を感じて、政府にゆるやかに連携する勢力が、新たな状況を利用しようとする試みも行われている。サウジアラビアが支援するアブドラ・アル・ハムジ准将率いるタイズの緊急部隊と、ハドラマウトの防衛部隊は、最近再編成された。
タリク・アブドラ・サレハ少将(添付画像)が指揮する首長国が支援する国民抵抗軍も、紅海南部の海岸で増強されている。暫定政府は、忠実と思われていたはずのアムジャド・ハレド准将に対してもついに行動を起こしたが、彼は実際には、アデン州とラヘジ州で、UAEが支援する南部移行評議会の勢力を標的に、フーシ派と協力していた。
フーシ派の弱点とされるものに対する、認識された政府連合内のこの混沌とした反応は、イエメンの敵対する派閥間の力の均衡に決定的な変動がなかったことを示唆している。どちらにも弱点がある。暫定政府内の外部支援による分裂が相変わらず破壊的である中、より厳格に組織化されたフーシ派には、回復するための時間と空間が与えられるだろう。しかし、だからといって、彼らが短期的に、あるいはイランとのつながりが回復するまで、対外作戦を再開する能力が必ずしもあるわけではない。
背景に潜んでいたフーシ派は、イスラエルとアメリカの両方が、もし彼らが一線から外れた場合には、彼らを攻撃する政治的決意を持っていることも今や知っている。実際、フーシ派が長期的な脅威であり続ける一方で、特にイスラエルは、おそらく、その脅威を恒久的に弱めるために、フーシ派に対する攻撃を再開する口実を探しているのだろう。
したがって、不都合な結論としては、フーシ派は敗北しているが、敗北していないということであり、イエメン国内で彼らに対する効果的な反対勢力が存在しないことを考えると、彼らはやがて、イスラエルと紅海の海運の両方を脅かすという熱意を取り戻すだろう。海運保険会社や船主は、当然のことながら、紅海の航路に対して引き続き警戒を怠らないだろう。
参考資料:”Are the Houthis Suppressed as a Red Sea Threat?” (Published Jul 2, 2025 4:19 PM by The Maritime Executive)