北極圏が世界的に重要な地政学的な引火点として急速に浮上するなか、フランス国防省は先週、フランス史上初の「北極圏防衛戦略」を発表した。
何十年にもわたって、北極圏は多国間ガバナンスの下でうまくやってきた。しかし、この協力の時代は今、大きな課題に直面している。ヨーロッパでの紛争の復活は、「ハイノース」での新たな商業的利益と相まって、かつては安定していた地域での潜在的な対立についての懸念を引き起こした。これらの変化に対応して、フランスは、この戦略的に重要な地域での地域の安定を確保し、運用能力を維持することを目指して、新しい北極防衛戦略を発表した。
かつては人里離れた孤立と異常気象によって特徴づけられていた北極圏は、フランスと全世界にとって主要な戦略的関心事へと急速に変貌を遂げた。それは単に広大で凍った風景だけではなく、その下に隠された莫大な富についての関心である。この地域には、石油、天然ガス、希土類元素などの天然資源が豊富にあり、そのすべてが世界的な関心を高めている。
この魅力に加えて、気候変動が氷の融解を劇的に加速させている。このことは環境への配慮を呼び起こすとともに、新しい商業輸送レーンを切り開くことでもある。最も顕著な北東航路は、ヨーロッパとアジア間の移動時間を約40%短縮する可能性がある。しかし、これらの新たな経済的機会は、地政学的な緊張を大幅に増幅させている。
2022年のロシアによるウクライナ侵攻は、重大な転換点となった。それは伝統的な権力闘争を再燃させ、以前はこの地域を定義していた相対的な協力の期間である「北極圏の例外(Arctic exception)」を効果的に終わらせた。2023年にフィンランドが、2024年にスウェーデンがNATOに加盟するなど、戦略的な状況は根本的に変化しており、北極圏沿岸の8カ国のうち7カ国がNATOに加盟している。この大規模な戦略的再編は、欧州と大西洋の安全保障における北極圏の重要な役割を確固たるものにし、競争の激化、軍事化、重要な資源確保競争を強めている。
地政学的な情勢がエスカレートする中、フランスは北極圏における軍事的プレゼンスと能力を強化している。その目的は明快だ。フランス軍が地域に効果的に展開できるようにし、国連安全保障理事会の常任理事国、NATO同盟国、EU加盟国としてのフランスの国際的責任を維持し、フランスと欧州連合の双方にとって重要なエネルギーと鉱物の供給を確保することである。基本的に、フランスの北極防衛戦略は、地域の安定に積極的に貢献しながら、行動の自由と影響力を維持することを目指している。

北極圏での目標を達成するために、フランスは3つの戦略的柱に焦点を当てている。
1. ポジショニングとプレゼンス
最初の柱である「ポジショニング」は、この地域におけるフランスの正当性を高めることを目的としている。これには、北極圏フォーラムへの積極的な参加と、フランス軍の行動をアピールすることが含まれる。省庁間の調整の強化により、結束力のあるアプローチが確保される一方、フランスは、情報収集と環境データ収集を通じて北極圏の環境に対する理解を深める。このデータは、海洋核抑止力にとって特に重要である。また、的を絞った展開は、軍隊の運用経験と相互運用性を引き続き構築することになる。
2.協力の深化
第2の柱である「協力」は、北極圏諸国との二国間パートナーシップの構築を中心としている。フランスは、合同演習と能力共有を通じて、NATO同盟国との相互運用性を強化する。また、すでに現地にいるEUの地域関係者とのパートナーシップを模索し、情報交換と後方支援を促進する。
3. カスタマイズされた能力
最後に、3つ目の柱である「能力」は、北極圏の極限条件に特化して適応した機器の開発に焦点を当てている。フランスは、新しい設計と既存のシステムの適応の両方を通じて、専門技術に投資する。これには北極圏の宇宙領域が含まれ、高緯度に適した衛星や地上中継局の開発が進められている。この戦略により、フランスは地域を効果的に監視し、その安全保障と環境の課題に対処することができるようになる。
この進化する極地の「チェス盤」で、フランスは沿岸諸国の増大する欲求の中で、明晰な声を上げることを目指している。この地域に歴史的に存在する国として、フランスは行動の自由を維持し、ヨーロッパへの供給ルートを確保しようとしている。
参考資料:”France unveils its Arctic Defense Strategy,” (Published on 15/07/2025 By Xavier Vavasseur NAVAL NEWS)