エストニアのツァクナ外相は、12月25日の同国とフィンランド間の主要な電力ケーブルとインターネット接続が損傷した事件に関連して、バルト海でのケーブル切断事故の頻度がすべて偶発的事故や貧弱な航海術によって引き起こされたとは信じがたいと述べた。

 エストニアとフィンランドの大統領は状況を協議し、フィンランドが25日のケーブル切断事故の調査を主導する一方、海中インフラの安全確保のため、バルト海におけるNATOの海上プレゼンスを高めることが重要だとして、両国がNATOに対してより強力なプレゼンスを示すよう伝えることに合意したと語った。

 さらにエストニアのミハル首相は、必要であれば、いずれかの国が脅威を感じる場合の相互支援を規定するNATO条約の第4条を発動すると述べ、さらなる抑止力向上のためNATOからの増援を呼びかけた。第4条は緊急事態を対象としたもので、この条文が発動されると北大西洋理事会で協議され、正式な共同意思決定や共同作戦が行われうるプロセスの開始を意味し、ロシアのウクライナ侵攻の際にも発動されたものだ。

 12月27日、エストニアのペヴクル国防相と国防軍司令官のメリロ少将は、エストニア海軍がエストニアとフィンランドの間を走る2本目の小型ケーブル「エストリンク1」を防護するため哨戒艦「Raju(ラジュ)」をバルト海に派遣したと発表した。メリロ司令官は、「エストニア国防軍の任務は、共和国に対する軍事攻撃を撃退することだ。国防軍はまた、非軍事的手段を使用して海上のエネルギーインフラへの攻撃を防ぎ、海上安全保障を確保するための軍事協力を組織する準備ができている」と述べた。

 他のバルト海沿岸国のうちリトアニアは27日、海軍がバルト海での監視を強化したと発表、スウェーデン沿岸警備隊も海軍や他の政府機関と緊密に協力し海上監視のための艦艇、航空機のプレゼンスを高めることを発表した。

これらの警備強化の動きは、欧州委員会が26日に「情報交換の強化、新たな探知技術、海底修理能力など海底ケーブルを保護するための取り組みを強化する」との声明を発表したことを受けたものだ。ルッテNATO事務総長は、フィンランド大統領との会談後、ソーシャルメディアへの投稿で、「私は全面的な連帯と支持を表明した。NATOはバルト海における軍事的プレゼンスを強化するだろう」と述べている。

 フィンランドが調査中の「Eagle S」は、ロシアの「影のタンカー船隊」の一隻とみられている。ロシアは現時点でこの問題は欧米諸国の問題だとして沈黙を守っているが、フィンランドの調査の行方とNATOが実効的な対応をとれるのかが注目される。

参考資料:“Baltic Countries Increase Infrastructure Patrols and Call for NATO Support,” (Dec 27, 2024 The Maritime Executive)