これまでのところ、ウクライナ和平交渉は、まるでヤルタ会談のようなトップ同士の話し合い、しかもロシアのペースで進んでいるようだが、「トリプル・レッド」下、ウクライナ支援を決める米連邦議会(第119回期)はどう関与するのだろうか。議会調査局(Congressional Research Service)が3/10付で発表したIn Focusレポート「ウクライナの軍事行動と見通し(Ukrainian Military Performance and Outlook)」の概要は以下のとおりだ。
ロシアの侵攻開始以来、ウクライナ軍(UAF)は兵員や軍需産業の面で劣勢であり、ロシアの進軍に対する防衛が次第に困難になっている。UAFは、柔軟性を発揮して欧米の軍事支援を自らの作戦に統合する能力を示してきたが、人員や装備の損失など、ロシア軍に対する攻勢を維持するための障害に直面し続けている。
バイデン政権は、2022年初頭以降、ウクライナ支援のための5件の追加歳出措置を実施した。2025年3月、トランプ政権はウクライナに対するさらなる軍事支援と情報共有の一時停止を発表したが、これが続けば、UAFの戦闘作戦維持能力に影響を与える可能性が高い。
兵 員
UAFのこれまでの戦闘能力は高い士気によって支えられてきたが、多数の兵員損失と脱走はその継戦能力を維持するうえでの課題となっている。
2014年にロシアがウクライナに侵攻した際、UAFはウクライナ東部のドネツク州とルハンスク州(ドンバス地方)においてロシア軍主体の部隊との戦闘経験を積んだため、2022年の侵攻ではウクライナは退役軍人や志願兵を長時間の訓練をすることなく国土防衛軍(TDF)と予備軍に迅速に配備でき、熟練の下士官(NCO)部隊を持たないUAFの戦闘能力を補うことができたとみられる。
戦争開始以来、UAFは多くの戦傷者を出し戦力を低下させているため、戦力を再生するための新兵を必要としているが、同軍の増援の必要性は緊急性が高く、基本的な訓練だけで兵士を前線に出さざるを得ない状況となっている。一方で、UAFは高度な兵器による複雑な作戦を実施する兵員も訓練する必要があるが、UAFの当局者は、ウクライナ国内で訓練を実施する能力があると述べている。
UAFは現在、兵員募集の課題に直面している。伝えられるところでは、ウクライナ兵の平均年齢は約40歳で、新兵の中には健康や薬物乱用の問題を抱えている者もいるという。ウクライナは2024年4月、減刑と引き換えに一部の囚人を兵役に就かせることなどを可能にする法案を可決したが、徴兵年齢の引き下げ(25歳から18歳に引き下げ)に関しては、世論の反対を理由に引き続き実施できていない。
2025年2月、UAFはより高い賃金、ボーナス、12か月間の動員免除などの条件で18歳から24歳までの志願兵が1年契約で軍務に服する新しい制度を導入した。UAFの関係者は、多数の応募者があったことを報告している。
また、UAFは指揮官を補佐する幕僚将校の充足と訓練に苦労しているとされ、上級司令部が戦術作戦まで調整・管理しなければならなくなる場合が生じており意思決定の遅延を招いている。この対策としてUAFは、軍団の指揮下で複数の旅団を組織するなどの組織変更を発表している。
2025年2月、UAFは新兵で編成される新しい旅団で脱走や犯罪の問題が多発しているため、新しい旅団の設置を一時見合わせ、既存の旅団の強化に集中するとの決定を下した。
装 備
UAFは、欧米とソ連・ロシア製の装備を組み合わせて運用しているため、メンテナンスと標準化の問題に直面しているが、欧米の支援とUAFの努力で改善しつつある。
ウクライナは、ソ連・ロシア製の砲弾・ロケット弾をほぼ使い果たし、火砲とその弾薬を欧米の支援にほぼ全面的に依存している。UAFは、今日まで、欧米の支援による質的優位(長距離精密射撃など)を利用して、火砲におけるロシアの量的優位を相殺する能力を実証してきた。
ゼレンスキー大統領によると、ウクライナ国内の軍需産業の増産にもかかわらず戦時需要を完全に満たすことはできず、必要な装備と武器の40%しか生産できていない。米国の支援は、必要量の30%を供給している。
参考資料:
In Focus report,“Ukrainian Military Performance and Outlook,” (Congressional Research Service, March 10, 2025)